アメリカ野球紀行

MLBのボールパーク、歴史を中心に紹介していきます。

PNC Park (Pittsburgh)とSweet Caroline

初めての記事になります。子供の頃から大リーグが好きで、たくさんのボールパークを見て来たので、アメリカ野球の面白さ、素晴らしさを紹介したくてブログを始めました。

 

コロナウィルスの影響が拡大し、MLBも日本のプロ野球も開幕の時期が不透明な今だからこそ、最初の記事として2013年4月19日に訪れたPittsburgh Piratesの本拠地PNC Parkのナイトゲームでの出来事を選びたいと思います。

 

当時ワシントンDCに駐在していた私は、バスで5時間かけてピッツバーグを訪れました。5時間で30ドル程度の格安のバスです。長旅ではありますが、野を超え山を越え、アメリカの景色を楽しめるので、苦痛ではありませんでした。

 

ピッツバーグに到着したのは午後3時頃、ホテルでチェックインをするとすぐにPNC Parkに向かいました。通算3000本安打の英雄ロベルト・クレメンテ(Roberto Clemente)の名前のついたRoberto Clemente Bridgeから美しいボールパークを見るだけでも心が躍りましたが、当日の試合中にもっと私の心を揺さぶることが起こりました。

 

前年まで3年連続16勝以上(17勝・16勝・16勝)を挙げているAtlanta Bravesのベテラン投手ティム・ハドソン(Tim Hudson)に対し、Piratesはこの年ホームラン王になるペドロ・アルバレス(Pedro Alvares)の2ランホームランなどで6-0とリードしていました。8回の表をメランソン(Mark Melancon)がわずか8球で3者凡退に抑え、帰り支度を始めるお客さんも出始めたところで、Sweet Caroline(Boston Redsoxが8回表が終わった後にFenway Parkで流すことで有名)が場内に流れたのです。

 

実はこの3日前の4月16日にボストンマラソン爆弾テロ事件が起きていました。遠く離れたピッツバーグの地でも、ボストンの街にエールを送ろうということでSweet Carolineが流されたのです。野球の好きなお客さんは、その意味を理解すると皆立ち上がり声を合わせて歌い出しました。よそのチームの応援歌をピッツバーグの野球ファンが声を揃えて歌っている。その場で私も歌いながら胸が詰まりました。

 

この時アメリカでは野球に限らず多くのスポーツの場でSweet Carolineが歌われており、ピッツバーグだけが特別なわけではなかったようです。でも、アメリカにおいて野球の人気がバスケットやアメリカン・フットボールの後塵を拝しても、国民的娯楽(National Passtime)と称される所以が分かったような気持ちになりました。春から秋にかけて毎日のようにプレーされるベースボールは、毎日の暮らしの中に当たり前のものとして存在している。だからこそ、テロのような異常なことが起きた時には、野球を見ることのできる当たり前の日常のありがたさを強く思い出されてくれる。ボストンに早く普通の生活が取り戻されることを、あの時ピッツバーグの人たちは強く願っていたのだと思います。

 

さて、私たちは今コロナウィルスとまさに闘っているところです。皆さまのご健康と一日も早いコロナウィルスの収束を心より願いたいと思います。野球を楽しめる当たり前の日々が早く訪れますように。

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ライト後方の構想ビル群を借景にしたPNC Park